レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Por Siempre Beatles / The Beatles【スペイン盤(モノラル)】

第五次ビートルズ・マイブームから抜け出せずにいる。

 

ビートルズは中毒性(?)が高いため、止めるに止められない…

クラシック、ジャズ、ロック、ソウル、ブラジル…と、採り上げたい盤は色々あるのに困ったことだ…

 

ということで、今回の「レコード評議会」の議題だが、またビートルズかよ、と言われるのを承知の上で(この記事で連続8つ目…)、この盤を採り上げたい。

 

 

この摩訶不思議な盤を…

 

 

The Beatles

Por Siempre Beatles

スペイン盤(1971年)モノラル

Odeon / EMI

1 J 060-04.973 M

SideA:060-04973-MA  3  M Ⅳ

SideB:060-04973-MB  1  M Ⅰ


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SideA

  1.Day Tripper  "Tus Viajes"

  2.Yes, It Is  "Si, Es Verdad"

  3.I'm Down  "Perdi Tu Amor"

  4.The Fool On The Hill  "El Loco En La Colina"

  5.Strawberry Fields Forever  "Campos De Fresas"

  6.We Can Work It Out  "Hemos De Salvar"

SideB

  1.Your Mother Should Know  "Tu Madre Deberia Saberio"

  2.Penny Lane  "Callejuela Del Penique"

  3.Baby, You're A Rich Man  "Baby, Eres Rico"

  4.I Call Your Name  "Tu Nombre"

  5.The Inner Light  "La Luz Interior"

  6.Blue Jay Way  "Arrendajo Azul"



1971年にスペインでリリースされた編集盤。

 

スペイン以外では、ニカラグアベネズエラ、コロンビア、ペルー、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチンといった中南米でリリースされている。

 

・1970年4月、ポールの「脱退宣言」によりビートルズが事実上解散

・1970年5月、ラストアルバム「レット・イット・ビー」がリリースされる。

・1971年3月、裁判を経て、ビートルズ解散が法的に決定。

 

このような動向の中、1971年にリリースされたのがこの編集盤「Por Siempre Beatles」。

 

スペイン語のタイトルを英訳すると「Forever Beatles」または「Beatles Forever」。

 

邦題を付けるとすれば「永遠のビートルズ」または「ビートルズよ、永遠に」。

 

アルバムのタイトル、リリースのタイミング、いずれもビジネス戦略・マーケティング戦略として、なるほどね、と感心する。

 

 

だが、その内容はと言うと…



 

選曲を見てみよう。

 

シングルA面より

  Day Tripper (1965)

  We Can Work It Out (1965)

  Strawberry Fields Forever (1967)

  Penny Lane (1967)

 

シングルB面より

  Yes, It Is (1965)

  I'm Down (1965)

  Baby, You're A Rich Man (1967)

  The Inner Light (1968)

 

EP「Long Tall Sally」より

  I Call Your Name (1964)

 

EP「Magical Mystery Tour」より

  Your Mother Should Know (1967)

  The Fool On The Hill (1967)

  Blue Jay Way (1967)

 

どういう基準で選曲されたのか?

ベスト盤の位置付けでは無いのは明らかだが、アルバム未収録曲集かと言うと、そうとも言い切れない。

 

シングルA面

♦︎ Strawberry Fields ForeverPenny Laneは、収録されている「マジカル・ミステリー・ツアー(1967年US編集盤)がスペインや中南米ではリリースされていないため、この編集盤に選ばれた?

♠︎ とするならば、Hello, Goodbye は、何故選ばれなかったのか?

♠︎ なお、The Ballad of John and Yoko は「ヘイ・ジュード」(1970年US編集盤)のスペイン盤には収録されていない(歌詞が問題となってカットされた)のだが、この編集盤でも依然として選ばれず。

♣︎ 一方で、Day TripperWe Can Work It Outは、既に「オールディーズ(1966年編集盤)に収録されているのに、何故選ばれたのだろう?

 

シングルB面

♦︎ Yes, It IsI'm DownBaby, You're A Rich ManThe Inner Lightは、アルバム未収録であることから、この編集盤に選ばれた?

♠︎ とするならば、Thank You Girl,  I'll Get You,  This Boy,  She's a Woman,  I Am The Walrus,  You Know My Name は、何故選ばれなかったのか?


EP「Long Tall Sally」

♦︎ I Call Your Nameは、アルバム未収録であることから、この編集盤に選ばれた?

♠︎ Long Tall Sally,  Slow Down,  Matchbox が選ばれなかったのはカバー曲だったからか?

 

EP「Magical Mystery Tour」

♦︎ Your Mother Should KnowThe Fool On The HillBlue Jay Wayは、収録された「マジカル・ミステリー・ツアー」がスペインや中南米ではリリースされていないため、この編集盤に選ばれた?

♠︎ とするならば、Magical Mystery Tour,  I Am The Walrus,  Flying は何故選ばれなかったのか?Magical…と I Am…の方が映える曲だと思うのだが…?(少なくとも Blue…よりは…)

♣︎ というよりも、一つのEP盤から3曲も選曲されているのはあまりにもバランスが悪い。変だと思うのだが…?

 

永遠のビートルズ」または「ビートルズよ、永遠に」というタイトルなのに、この一貫性が無く、偏った選曲ってどうなのよ?と首を傾げざるを得ない。

 

… 摩訶不思議な選曲だ。

 

おまけにB面は、The Inner LightBlue Jay Wayというジョージの不思議系な曲で終わる…



 

ジャケットを見てみよう。

 

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中南米っぽい(?)色使いのジャケット。

メンバー4人の顔があしらわれているが、この写真は「ホワイト・アルバム」に付属しているポスターのものだ。

 

そして、中央には中南米っぽい紋様が描かれている。

気になって調べてみると、古代アステカ太陽の石の紋様と判明。

 

中南米向けの編集盤だからか?

 

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そして裏ジャケットは、抱擁を交わす男女のイラスト。(こちらは何のイラストなのか分からず...)

 

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恐らく表裏とも、既存のイラストの上に「ホワイト・アルバム」のポスターを乗せて写真を撮り、それをジャケットにしたのだろう。

 

何ともテキトー感が漂う…

 

永遠のビートルズ」または「ビートルズよ、永遠に」というタイトルなのに、テキトー感が漂うこのデザインってどうなのよ?と首を傾げざるを得ない。

 

… 摩訶不思議なジャケットだ。

 

 

 

を聴いてみよう。

 

モノラル盤だ。

ステレオミックスをモノラルでカッティングした偽モノではなく、ちゃんとしたモノラルミックス

 

音質も悪くない。

編集盤は、往々にしてテープのジェネレーションが進んでいるため(テープのコピーのコピーのコピー…)、音に力が無い、キレが無い、へたっているということもあるのだが、この盤はそんなことは無い。

恐らくトランジスタカッティングで、なかなかにキリッとした音がする。ベースもしっかりと鳴っている。

だがしかし…

Strawberry Fields ForeverBaby, You're A Rich ManThe Fool On The Hillの3曲、何と冒頭の音が欠落している。

慌ててフェードインしてくるような始まり方なのだ。

 

これは酷い。

 

永遠のビートルズ」または「ビートルズよ、永遠に」というタイトルなのに、このいい加減としか言いようがない作りってどうなのよ?と首を傾げざるを得ない。

 

一方で、音質そのものはキリッとした音で、決して悪くない。

むしろ良い音と言ってよく、気持ち良く聴ける音なのだ。

 

いい加減な作りなのに音は良い?音は良いのにいい加減な作り?これってどうなのよ?とこれまた首を傾げざるを得ない。

 

… 摩訶不思議な音だ。

 

 

 

という訳で、選曲ジャケット、全てにおいて摩訶不思議な盤で、何と言おうか「珍品」の類いなのかなぁ、と…

 

 

が、ここまで来ると嫌いではない。

むしろ愛着が湧いてきて、結構愛聴している。

 

何でこの選曲なんだよ、ジャケットもテキトーだし、始まりの音が欠けているし、ホントいい加減だよな、と文句を言いながらも、それでも音が良いこともあって、楽しく聴けてしまう。



うーむ、ホント摩訶不思議な盤だ…

 

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ちなみに、ステレオ盤はモノラルテープをステレオに変換した擬似ステレオ(擬似ステ)らしい…