レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Street Fighting Man / The Rolling Stones【オランダ盤(モノラル)】

ビートルズのモノラルとステレオは、ミキシングを別々に行っているため、いわゆるミックス違いが数多くある。

更には、モノラルだけで数種類、ステレオだけで数種類といったミックス違いが存在する曲もある。

 

ミックス違いを全て詳しく書くと、それだけで本一冊になるほど大量にあるので、ここには書かないが、大雑把に言うと以下のような種類がある。

 

・そもそも演奏が別(正しくはテイク違い

・楽器の演奏は同じだが、ボーカルが違う

・特定の楽器や効果音の入っている箇所が違う

・フェードアウトの長さ(曲の長さ)が違う

・テープ再生の速度が違う(音程が違う)

 

ビートルズを聴くというのは、ミックス違いを楽しむということでもある(←違いますか?)

 

ちなみに、自分の好きなミックス違いを5つ挙げろと言われたら、こんなところ(※)

 

 Norwegian Wood

 Paperback Writer

 Yellow Submarine

 Strawberry Fields Forever

 I Am The Walrus

 

※ 何故 Please Please Me が入っていない? Help! はどうした? Tomorrow Never Knows を抜きに語れないのでは?…など、多々異論はあるでしょうが、ご容赦ください。

 

一方で、ビートルズ以外については、ミックス違い云々といった話は殆ど聞かない。

実際にミックス違いが無いのかも知れないし、あったとしてもビートルズのようにこだわる方がいないのかも知れない。

 

 

そんな中「これはミックス違いではないか!」と驚いた曲がある。

 

"ストリート・ファイティング・マン"(ローリング・ストーンズ)のモノラル シングル バージョンがそれだ。

 

 

ということで、今回の「レコード評議会」の議題はこれだ。



The Rolling Stones

Street Fighting Man(7" Single)

オランダ盤(1968年)モノラル

Decca

AT 15 113

Side1:AA 15 113 1F 1 ℗ 1968 670 D 11

Side2:AA 15 113 2F 1 ℗ 1968 670 D 11


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Side1:Street Fighting Man
Side2:No Expectations 



一時期、ビートルズストーンズザ・フーなど、60年代のシングル盤を買い漁っていたことがある。

 

そこで手に入れたのがこのモノラル シングル盤なのだが、聴いて驚いた。

 

Well now, what can a poor boy do except to sing for a rock'n' roll band?

'Cause in sleepy London town, there's just no place for a street fighting man, No

 

サビの部分、♪ street fighting man に続いて、通常は No と歌われるところ、このモノラル シングル バージョンではそれが無い。あれ?と肩透かしを食らった感じだ。

それに、バッキングボーカルの部分などもよく聴くと違っている。

 

分かりやすく(?)記載すると、以下の通りだ。

 

通常バージョン(ステレオ および モノラルアルバム)

(1番サビ) street fighting man, No

(2番サビ) street fighting man, No

(間奏) 〜 Get Down 〜 (3番Aメロ)

(3番サビ) street fighting man, NoYeah

Get Down 〜 (アウトロ)

1、2、3番ともミックは No と歌っている。

但し、3番ではバッキングボーカル(キースか?)Yeah と歌っている。

3番Aメロに入る直前とアウトロに入る直前にミックの Get Down との掛け声が入る。

 

モノラル シングル バージョン

(1番サビ) street fighting man

(2番サビ) street fighting man

(間奏) 〜 Get In 〜 (3番Aメロ)

(3番サビ) street fighting man, (No

Get Out 〜 (アウトロ)

 

1、2、3番とも No は無し。

但し、3番ではバッキングボーカル(キースか?)No と歌っている。

3番Aメロに入る直前の掛け声が Get In (?)となっている(ギェ、ゲェと聴こえる)

アウトロに入る直前の掛け声が Get Out となっている。

 

以上の違い加えて、ミックのボーカルはダブルトラック(歌を重ねて録音している)なのだが、通常バージョンは分かりにくいのに対して、モノラル シングル バージョンダブルトラックということがはっきりと分かる。

 

なお、このミックス違いは、モノラル シングル バージョンのみで、モノラル アルバム バージョンはステレオバージョンをモノラルに変換したもののようだ(実際にモノラルアルバムを聴いた訳では無いが、ネット情報やストリーミングの音からすると、そのようだ)



しかし、何故このようなミックス違いができたのだろうか?

 

推測 その1

このシングル盤は、アルバム Beggars Banquet(1968年12月リリース)先行シングルとして、1968年8月に各国でリリースされたもの(但し、英国ではリリースされていない)

アルバムに収録するに際して、もっとパンチが欲しいとして、NoGet Down などを追加でオーバーダビングして、ステレオ バージョンを作った結果、ミックス違いとなった。

 

推測 その2

もともと、NoGet Down などは録音されていたが、シングルとアルバムとで違いがあったほうが面白いだろうということで、あえてミックス違いを作った。

(ミックス違いが大量にあるビートルズに触発された?)

 

どちらもありそうな話だと思うが、実際のことろはどうなのだろう?

 

 

話は変わって、このシングル盤、ストーンズの本国である英国ではリリースされていないが、米国、欧州各国を始め、殆ど国でリリースされている。

 

Discogsのデータによれば、殆どの国の盤はUKマザーのようだ(※)

※ 枝番に違いはあれどもマトリックスナンバーが基本的に同じ(A面:XDR43220、B面:XDR43221)

 

この頃のDeccaストーンズが所属するレコード会社)は、英国でカッティングして作ったメタルマザーを各国に送り、それをもとに各国でプレスしてレコードを作る、といった方法を採ることが多い。このシングル盤もその方法が採られているようだ。

 

ところが、このオランダ盤シングルは、マトリックスナンバーが以下の通りであり、UKマザーではない。いわゆる独自カッティングだ。

 

 Side1:AA 15 113 1F 1 ℗ 1968 670 D 11

 Side2:AA 15 113 2F 1 ℗ 1968 670 D 11

 

各国とも殆どがUKマザーなのに、何故にオランダ盤独自カッティングなのだろう?

(ちなみに、Discogsを見ると、その他の国で独自カッティングなのはユーゴスラビア盤。)

 

 

ところで、"ストリート・ファイティング・マン"って、日本語にしてみると分かるけど、スゴいタイトルだよな。

 

Wikipediaストリートファイト(Street fighting)は、街頭や公園など公共の場所での暴力行為を指す。

 

和訳(直訳):ストリートファイトの男、路上で暴力行為を働く男、街中で暴力を振るう男…

 

 

ベトナム反戦デモフランスの五月革命に触発されて書かれた曲だというが、サビの部分は以下の通りだ。

 

Well now, what can a poor boy do except to sing for a rock'n' roll band?

'Cause in sleepy London town, there's just no place for a street fighting man, No

 

「金の無い奴は、ロックバンドで歌うほかに、何が出来るって言うんだ?

 保守的なロンドンじゃ、街中で暴れるような奴は居場所がないからな」

 

こんな歌詞も出てくる(一部意訳しています)

「至るところでデモが繰り広げられている」

「今が革命の時だ」

「支配者やその取り巻き連中を倒してやる」

 

このシングル盤のリリースは1968年8月。

ベトナム反戦運動の高まりの他、キング牧師暗殺(4月)やロバート・ケネディ暗殺(6月)もあり、世界中に混沌とした空気が漂う中、この歌詞は危険だ。

 

 

ここまで書いて気が付いた。

 

こんな歌詞だから、Deccaは本国にもかかわらず、英国でこのシングル盤をリリースしなかったのか、と。

 

万一、それこそロンドンで暴動騒ぎでも起こったら、ストーンズのみならず、Deccaも非難されかねないと思ったのではないだろうか?

 

または、リリースしても放送禁止になるだろうから、ビジネス的にもイマイチと考えたのか?

 

実際、米国ではいくつかのラジオ局で放送禁止になったということだ。

 

 

シングル盤1枚とっても、色々と考察すべきことがあるな…

まあ、勝手に書きなぐっているだけだが…

 

 

そう言えば、音について書きそびれていた。

オランダ独自カッティング、すこぶる良い音です。