スタイル評議会 The Style Council
レコード評議会 The Vinyl Council
The Style Council(スタイル・カウンシル)、ブログのタイトル「レコード評議会」はここから採っている。
人気絶頂にありながら、これ以上このバンドでは新しいことが出来ないと、The Jam を潔く解散した Paul Weller が Mick Talbot と組み、ソウルやジャズを取り入れて、色々なスタイルであれこれ演り始めたのが The Style Council。
名は体を表す、と言うが、スタイル評議会とは上手い名前だ。
このブログも、色々なジャンルのお気に入りのレコードについてあれこれ書く、ということでタイトルを「レコード評議会」とさせていただいた訳だが、我ながら結構気に入っている。
将来、英訳されるようなことにでもなれば、タイトルは The Vinyl Council とするつもりだ。120%そんなことは無いが。
The Style Council、活動していた80年代当時、日本ではスタカンと呼ばれていた(くれぐれもスカタンではないので、念のため)。
オシャレなグループとして認識されていたように思う。FRED PERRYのポロシャツ姿が思い浮かぶ。
だが、歌詞を見ると、反骨精神に溢れたものや反体制的なものが多く、中にはサッチャー保守党政権に反対する姿勢を明確にしているものもある。
音はオシャレ系だが、ロック魂に溢れていた。
(The Jam で青筋を立ててギターをかき鳴らしながら歌っていたのだから、もともとそうなのだが…)
ということで、ここからが「レコード評議会」の本題。
今回は、1983年から1986年に英国でリリースされた The Style Council の12インチシングル特集。
CDではなく、レコードでも聴きたいと思い、コツコツと集めてきたのだが、やっぱりレコードは音が良い。音に芯があるし、キレも一段上だ。しかも45回転の威力なのか、音が濃密だ。
レコードのおかげで、見直した曲もいくつかある。
特に気に入っている曲についてコメントしていくこととしよう。
TSC 1(Mar 12, 1983)← 7"シングル(12"はありません)
A: Speak Like A Child
B: Party Chambers
TSCX 2(May 21, 1983)
A1: Money Go Round
B1: Headstart For Happiness
B2: Mick's Up




A1: ギター(カッティング)、ベース(スラッピング)、ドラム、ホーンセクションが活躍するファンク・ナンバー。ただ、黒くはない。ホワイト・ファンクなどという言葉があるのかどうか分からないが、そんな感じで、それがまた良い。正直繰り返しだけの退屈な印象だったが、レコードで聴いて初めてそのカッコ良さを知った。
B1: Café Bleu (1stアルバム)に収録のアルバムバージョン(ドラム、ホーン、女性コーラス付き)と違い、アコギとオルガンとボーカルだけの演奏。デモトラックっぽいが、個人的にはこちらの方が好み。
TSCX 3(Aug 6, 1983)
à Paris
A1: Long Hot Summer (Extended Version)
B1: Party Chambers
B2: The Paris Match
B3: Le Départ




アルバムのように à Paris というタイトルが付いている。ジャケットもパリでの写真。
A1: 正直に言えば退屈な曲と思っていたが、レコードで聴いて「こんな良い曲だったっけ?」と改心した。Marvin Gaye の Sexual Healing にインスパイアされたようなブラック・コンテンポラリー(ブラコン)風。シンセベースも悪くない。レコードの音の良さ故だろう。
B2: 終始流れるアコーディオンと後半で歌われるフランス語からパリの雰囲気が香るシャンソン風の名曲。何となく、The Beatles の Michelle を思い起こさせる。Café Bleu に収録のアルバムバージョン(女性ボーカルバージョン)も味わい深い。
TSC 4(Nov 12, 1983)← 7"シングル(12"はありません)
A1: A Solid Bond In Your Heart
B1: It Just Came To Pieces In My Hands
B2: A Solid Bond In Your Heart (Instrumental)
TSCX 5(Feb 11, 1984)
A1: My Ever Changing Moods (Long Version)
B1: Spring, Summer, Autumn
B2: Mick's Company




A1: Café Bleu に収録のアルバムバージョン(ピアノとボーカルのみ)と違い、こちらはバンド演奏バージョンで女性コーラスも付いている。歌詞の内容からすると、アルバムバージョンの方が合っていると思うが、こちらのアレンジもカッコ良く、両方とも好きだ。最もスタカンらしさが出ているポップ・ナンバーで、スタカンと言えばこの曲が浮かぶ。
TSCLP 1(Mar 17, 1984)←1st アルバム
Café Bleu
Side A: Mick's Blessings / The Whole Point Of No Return / Me Ship Came In! / Blue Café / The Paris Match / My Ever Changing Moods / Dropping Bombs On The Whitehouse
Side B: A Gospel / Strength Of Your Nature / You're The Best Thing / Here's One That Got Away / Headstart For Happiness / Council Meetin'
TSCX 6(May 19, 1984)
Groovin'
A1: You're The Best Thing (Long Version)
A2: You're The Dub Thing
B1: The Big Boss Groove




これもアルバムのように Groovin' というタイトルが付いている。
A1: Café Bleu に収録のアルバムバージョンよりもストリングスが豊富に入っている、フィラデルフィア・ソウル(フィリー・ソウル)風のリミックス。ファルセットで歌っているのもそれっぽい。こちらのバージョンの方が好み。
B1: レーベル面にAAとあるので、いわゆる両A面盤というやつ。シャッフルビートの R&Bナンバー。演奏するのに自由度が高いからか、ライブではよく演奏されていたようだ。
TSCX 7(Oct 6, 1984)
A1: Shout To The Top
A2: Shout To The Top (Instrumental)
B1: The Piccadilly Trail
B2: Ghosts Of Dachau




A1: ストリングスが活躍するブルー・アイド・ソウルのヒットナンバー。スタカンの中では一番有名なのでは?ポップ過ぎて少し気恥ずかしい感じもしていたのだが、レコードで聴くとストリングスのキレの良さが最高で、やっぱり良い曲だな、と。
B1: ボサノバ風のリズムが良い感じ。パーカッションもアクセントが効いている。ギターもオルガンもセンスが良い。B面で目立たないのが勿体無い。隠れ名曲。
TSCX 8(May 4, 1985)
A1: Walls Come Tumbling Down!
A2: Spin' Drifting
B1: The Whole Point II
B2: Blood Sports




A1: Our Favourite Shop (2ndアルバム)の先行シングル。サッチャー政権下のこの当時、英国の失業率は最悪で、それに対する明らかなプロテストソング。ある意味、最も Paul Weller らしい最高にロックな一曲。
やってみるか、それとも無為な日々を過ごすか / 物事は変えられる、壁は崩せるんだ
わかるか、階級闘争は神話の世界のことじゃない、現実のことなんだ / ジェリコの戦いのように、壁は崩せるんだ
体制だろうと制度だろうと変えられる 、強い団結さえあれば / 今の状況は変わる、きっと壁は崩れる (※)
※ Governments crack and systems fall - 'Cause Unity is powerful / Lights go out - Walls come tumbling down!
直訳すると「団結が強ければ、政府は砕け、制度は壊れる / 事態は一変する、壁は崩れる」。シビレる歌詞だな(放送禁止にならなかったのかな?)
タイトルは、黒人霊歌「ジェリコの戦い」から採られている。そう言えば、コーラスの掛け合いがゴスペルっぽくもある。
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down
「ジェリコの戦い」は、旧約聖書の中のヨシュア記における、ヨシュアが約束の地(神がイスラエルの民に与えると約束した土地、Promised Land)であるカナンを手にするべく、ジェリコ(エリコ)の砦を攻略した時の様子を歌にしたもの。ヨシュアの軍がラッパ(角笛)を吹きながら行進すると、城壁は崩れ落ちたという。なるほど、この曲のアレンジでトランペットが使われているのも、ラッパになぞらえているという訳だ。
A2: ギター、ベース、オルガン、ドラム、ボーカルとシンプルなアレンジのポップ・ナンバー。シンプル故に曲の良さが際立つ。メロディの良さはスタカン中でもトップクラス。ヒットを狙うA面ではないし、曲調が合わないからアルバムにも入れられないしで、シングルB面となっているものの、実は良い曲と言うのがあるが、正にそれ。かなりの隠れ名曲。
B1: Café Bleu (1stアルバム)に収録されている The Whole Point Of No Return(ナチュラルトーンのギターとボーカルのみ)のリメイク。ドラムとヴィブラフォンのような音が入ったジャジーなアレンジ。粋なアレンジでこちらの方が好み。
TSCLP 1(Jun 8, 1985)←2nd アルバム
Our Favourite Shop
Side A: Homebreakers / All Gone Away / Come To Milton Keynes / Internationalists / A Stones Throw Away / The Stand Up Comic's Instructions / Boy Who Cried Wolf
Side B: A Man Of Great Promise / Down In The Seine / The Lodgers (Or She Was Only A Shopkeeper's Daughter) / Luck / With Everything To Lose / Our Favourite Shop / Walls Come Tumbling Down!
TSCX 9(Jun 29, 1985)
A1: Come To Milton Keynes
A2: Our Favourite Shop (Club Mix)
B1: (When You) Call Me
B2: The Lodgers (Club Mix)




A1: Our Favourite Shop からのシングルカットだが、何となくシングル向きに思えないのは何故?途中4ビートの部分はスイング・ジャズっぽい。The Village Green Preservation Society (The Kinks) に通じるものも感じるし、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (The Beatles) の音作りも思い起こされる。いずれ、英国ならではのサウンド。
B1: シンセベース、打ち込みっぽいアレンジで時代を感じさせるが、きれいなメロディのミディアムバラード。アコースティックなアレンジだったら相当な名曲になっていたのでは?と思う。
TSCX 10(Sep 21, 1985)
A1: The Lodgers (Extended Mix)
B1: The Big Boss Groove (Live)
B2: Move On Up (Live)
B3: You're The Best Thing (Live)
B4: Money-Go-Round Medley (Live)






A1: Our Favourite Shop からのシングルカットではなく、再録バージョン(A NEWLY VERSION PRESENTED TO YOU BY PUBLIC DEMAND / 皆様のご要望によりお送りする新バージョン とジャケットにある)。こちらの方がややアップテンポ。洗練されたソウルフルなナンバー。
なお、この曲は、Our Favourite Shop のインナースリーヴに The Lodgers (Or She Was Only The Shopkeeper's Daughter) と表記されている。サッチャー首相のことを指して、ただの店主の娘だったんだろ、と音はオシャレなのに言葉はキツい。
同時代の英国バンド The Blow Monkeys も She Was Only A Grocer's Daughter(1987年の3rd アルバムタイトル、ただの雑貨屋の娘だったんだろ)と同じような言葉で扱き下ろしている。この言い回しは、当時の英国で流行っていたのかね?
B面は45回転ではなく、33回転。リバプールとマンチェスターでの1985年のライブ。ジャケット裏面下に「東京、ニューヨーク、パリ、ローマ、他皆さんのことも忘れていないよ」と書いてある。ライブでの写真も載っているが、キーボードはKAWAIが使われていたんだな。B2は Curtis Mayfield のカバーだが、The Jam の Beat Surrender の12インチシングルにも収録されている(よっぽど好きなのだな)。
CINEX 1(Mar 26, 1986)
A1: Have You Ever Had It Blue (Uncut Version)
B1: Have You Ever Had It Blue (Cut Version)
B2: Mr Cool's Dream




当初は TSCX 11 とする予定だったが、Absolute Beginners(David Bowieらが出演の映画)のサントラに収録の曲ということで、CINEX 1 となったらしい。それで、TSCX 11 は欠番、次のシングル It Didn't Matter (※) は TSCX 12 となった、と。
※マクセル・カセットテープのCMで使われていた(本人達も出演していた)。
A1: Our Favourite Shop の収録曲である With Everything To Lose のリメイク(歌詞とアレンジが違う)。ジャケットを見て驚いた。「Arrenged By Gil Evans」とある。あの Gil Evans(ジャズ界では超有名なアレンジャー)がアレンジしているのか!と、かなり吃驚。ジャズ・ボッサ風 × 豪華なホーンセクション + 女性コーラス。ゴージャスかつオシャレなアレンジだ。
スタカンの活動期間は1983年から1989年までだが、お気に入りなのは、ここで記載した1983年から1986年までのものだ。
これ以降になると、洗練度合いが更に進み、その代わりに熱いものが少し薄れてしまったような感じがする。また最後にはアシッド・ジャズやハウスにまで行ってしまう。
Paul Weller のことを信頼しているので、どんなスタイルになってもOKと思っている。
だが、1983年から1986年までが、様々なスタイルの中で、洗練と情熱が絶妙なバランスで並存していたと思う。
オシャレだけど、熱いロック魂を持っている、この時期のスタカンが好きだ。
最後に、以上の特に気に入っている曲(16曲)を、好きな順に並べてみた。
1. Walls Come Tumbling Down!
2. My Ever Changing Moods
3. The Paris Match
4. Spin' Drifting
5. The Whole Point II
6. Money Go Round
7. You're The Best Thing
8. Shout To The Top
9. The Piccadilly Trail
10. The Lodgers
11. Have You Ever Had It Blue
12. Long Hot Summer
13. Headstart For Happiness
14. Come To Milton Keynes
15. The Big Boss Groove
16. (When You) Call Me
それにしても、今回の記事は「評議会」というより、ただの私のお気に入りの紹介になってしまったな、と。
まあ、Our Favourite Shop ならぬ My Favourite Shop ということで。