レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Magical Mystery Tour / The Beatles【日本盤(ステレオ/EAS)】

レコード評議会」と大層なタイトルを付けておいて、これ?と思われる方もいるでしょう。

ですが、最初に買ったレコードがこれだったので、まずはこれから。

 

ビートルズ

マジカル・ミステリー・ツアー

日本盤(1976年)

東芝EMI

EAS-80569

Side1:SMAL-X-1-2845 5S 31 〄 A3-355

Side2:SMAL-X-2-2855 3S 8 〄 


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EAS盤または国旗帯盤と呼ばれているもの。

 

1980年代の始め、FMラジオでビートルズ特集というのを何日か連続して放送していて、何の気なしに聴いたのが事の始まり。

ロックを聴くなら、まずはビートルズだよな」と街のレコード屋で買ったのがこの盤。

 

Please Please Me(確かバブルガムのCMで流れていた)Yesterday教科書に載っていた)Let It Be(映画「悪霊島」の主題歌だった)などの知っている曲が入ったアルバムにしようか悩んだが、カラフルなジャケットに惹かれてこれにした。

 

家に帰って、A面に針を下ろすと、勢いのあるブラスが響き、「Roll up Roll up for the Mystery Tour, that's right this way」との掛け声から盛り上がるタイトル曲 Magical Mystery Tour

その後も色々な曲調が続き、そしてA面最後、チェロが変なメロディを奏で、「I am he as you are he as you are me and we are all together」と始まる。後のラップさながらに喋るように歌われるシュールな歌詞とチェロの使い方に前衛を感じさせる I Am The Walrus

 

B面は「You say Yes, I say No...」とポップで分かりやすい Hello Goodbye から始まる。

そして続く2曲目、フルートのような音のイントロから入り、「Let me take you down  'Cause I’m going to ...」と浮遊感のある不思議なメロディ。歌詞の内容や歌い方からすると静かな曲の印象なのに、弦楽器やブラスが響き、ドラムも力強い。そのギャップが不思議な感じを増幅する Strawberry Fields Forever

 

知っているビートルズの曲とは全然違うけど、これは確かに帯にある通り

音と詩の魔術によるパノラマ・ア・ラ・ビートルズの世界!

 

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昭和世代の10代半ばの耳に、その音楽は素晴らしく新鮮だった。(これがパノラマ・ア・ラ・ビートルズの世界か~、と思ったのでした。)

 

 

...で、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

EAS盤、おそらく1968年に米キャピトルから送られてきたテープをもとに、1976年の再発に際して日本でカッティングされたもの。

 

英EMI → 米キャピトル → 東芝EMI とテープがコピーされており、B面の3曲 Penny LaneBaby You're A Rich ManAll You Need Is Love は米キャピトルによる擬似ステレオ

なおかつ再発盤ということで、音はあまり期待できないはずなのだが、改めて他の盤と比べつつ聴いてみると、色々な意味で悪くない。

 

 

まずは、USキャピトル・オリジナル・ステレオ盤(1967年)と比べても、EAS盤の方が1割増くらいカッティングレベルが高く(音が大きい)、音にキレもある。

 


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US盤よりくっきりした音で(真空管トランジスタとのカッティングの差もあるので、一概にどちらが良いとは言えないが)、先入観無しに聴いたら、EAS盤の方が良いと言う人も多いのでは。

 

 

次に、ドイツHörzu盤(1973年)だが、US盤やEAS盤では擬似ステレオだったB面の3曲がリアルステレオで収録されている。

 


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これは音の鮮明さが素晴らしく、細かい音までよく聴こえる。さすがにEAS盤は分が悪い。但し、カッティングレベルはEAS盤の方が高い。

 

 

そして、ドイツDDM盤(1981年)。これもB面の3曲はリアルステレオ

 


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DDMカッティングの音は筋骨隆々と言うか(特にベースやドラムがデカい)、変な例えだがサイボーグのような音(もしくはターミネーターのような音)で、完全に別物。なので、どちらの音が良いとか、比べること自体できないが、聴いていて面白い音ということで言えば、EAS盤は分が悪く、DDM盤に軍配が上がる。

 

 

と、ドイツ盤との比較ではやや劣勢なEAS盤ではあるが、貴重なミックス違いが収録されている。

 

A面 I Am The Walrus

2度目の「I'm crying...」でのドラム:現行CDなどの通常バージョンでは中央と左の両方で鳴っている。ドイツ盤とUS盤(音源が同じEAS盤も)は中央だけで、左は無し

イントロのメロトロンの音数:通常バージョンは6回、ドイツ盤は6回、US盤(EAS盤も)は4回

注: 因みにモノラルはイントロ4回&ドラム無し。そもそもこの曲はミックス違いが多い。

 

B面 Strawberry Fields Forever

ボーカルのエコー:現行CDなどの通常バージョンやドイツ盤(同じ音源)では、テイク7とテイク26とを繋いだ前後の雰囲気を合わせるため、薄らとエコーがかかっている。US盤(EAS盤も)はエコーがかかっておらず、繋ぎ目の前後でボーカルの雰囲気がかなり変わる

2度目の「Let me take you down...」のソードマンデル:通常バージョンやドイツ盤では、定位が右から左へ横切る。US盤(EAS盤も)は定位が中央のまま

その他:楽器の定位やフェードアウトのタイミングが違ったりしている。

 

ということで、US盤(EAS盤も)に収録されている I Am The WalrusStrawberry Fields Forever は、今となってはレアなミックスなのだ。

 

そして、EAS盤はそのレアなミックストランジスタカッティング盤ということになる訳だ。

しかもカッティングレベルが高く、キレもある。

 


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ビートルズのレコード蒐集においては殆ど見向きもされない盤なのでしょうが(外国人は帯=OBIに価値を置いているようだが)、こうしてみると、良いじゃないか、EAS盤、と思うのです。