レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Full House / Wes Montgomery【US盤(Original)、US盤(OJC)】

 Full House 

 Wes Montgomery 

 recorded 'live' at Tsubo - Berkeley, California

 

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 A1:Full House

 A2:I've Grown Accustomed to Her Face

 A3:Blue 'n' Boogie

 B1:Cariba

 B2:Come Rain or Come Shine

 B3:S.O.S.

 

 Wes Montgomery:Guitar

 Johnny Griffin:Tenor Saxophone

 Wynton Kelly:Piano

 Paul Chambers:Bass

 Jimmy Cobb:Drums

 

 Orrin Keepnews:Producer, Liner Notes

 Wally Heider:Recording Engineer 

 Ken Deardoff:Album Design 

 Jim Marshall:Back-Liner Photos

 

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Riverside Recordsの創業者でプロデューサーのオリン・キープニュースによるジャケット裏面のライナーノーツには以下のようなことが書かれている。

 

1962年6月初旬、マイルス・デイヴィスのグループがサンフランシスコに来ていた。

ジョニー・グリフィンもサンフランシスコに来ていた。

ウェス・モンゴメリーは兄弟とバークレー(サンフランシスコ湾東岸の都市)のコーヒーハウスTsuboで演奏していた。

 

偶然近くにいたことから「マイルスのリズムセクション3人ジョニー・グリフィンウェス・モンゴメリー」によるレコーディングのためのグループが編成され、1962年6月25日、バークレーのコーヒーハウスTsuboでライブレコーディング(公開録音)が行われた。

 

月曜日の夜にもかかわらず、店は人で溢れた。

 

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アルバムタイトルおよびA1の曲名Full Houseは、この情景(店が満員)を表している。

また、一流の素晴らしいメンバーが5人揃っていることから、ポーカーのフルハウスも意味している。しかも、キングとエースによるフルハウス(※)

 

 ※ キングとエースは、それぞれこんな感じだろうか?

   キング:ジミー・コブ (ds)

       ポール・チェンバース (b)

   エース:ウィントン・ケリー (p)

       ジョニー・グリフィン (ts)

       ウェス・モンゴメリー (g)

 

なかなか洒落たタイトルだと思う。

ジャケットのデザインも秀逸だ。

 

 

ということで「レコード評議会」、Full HouseUS盤 Original と US盤 OJC の聴き比べが今回の議題。

 

 

Full House 

US盤

Riverside

RS 9434(1962年)

Side1:RS 9434A  4771

Side2:RS 9434B  4771


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CDで聴いていた時分から愛聴していたこのアルバム。特に (A3)Blue 'n' Boogie と (B3)S.O.S. は白熱の演奏で、ハードバップの超名演だ。

 

そんなアルバムを是が非でもオリジナル盤で聴いてみたいと探し続けたが、なかなか無い。レコード店でもDiscogsでもまず見ることはなく、あっても盤質Goodレベル(=キズあり、音飛びありのレベル)しかない。

 

そんな中、1年半程前にeBayで出品されているのを偶然発見。しかもタイミングが良かったのか、競合相手もなかったため、何と103ドルで落札。

届いた盤は少し擦り傷がある程度で、ノイズもほとんど無しの盤質EX〜VG+レベル。それでこの値段は格安と言える(倍以上でもおかしくない)

 

音は、さすがのオリジナル盤。素晴らしい演奏がより素晴らしく聴こえる。

 

ジミー・コブ (ds):ドラムが演奏にグルーヴを与えている。A3でのリムショット(カッ、カッ、という音)はエッジが効いていて、スティックがスネアを叩く映像が見える。B3でのシンバルワークもカッコいい。

 

ポール・チェンバース (b):スピーカーからズンズンと鳴る低音に芯があり、ベースの動きがよく分かる。底から支えつつ、演奏に推進力を与えているのが実感できる。

 

ウィントン・ケリー (p):よく弾むピアノが粒立ちの良い音で、スウィング感が素晴らしい。特にA3のピアノソロは彼の中でも最高のものだと思う。

 

ジョニー・グリフィン (ts):少しざらついた感じで、かつ太い音。スピーカーから出てくるテナーの音がリアルで、まるで彼がそこにいるかのようだ。A3でのテナーソロで興奮する聴衆の拍手が店の熱気を伝えてくれる。B3のソロもこれしかないという演奏。

 

ウェス・モンゴメリー (g):シングルトーン、オクターブ奏法、コード奏法とそれぞれの違いがリアルな音で伝わってくる。ウェスは親指で弾くのだが、その動きが見える。歌うようなフレーズ(しかもアドリブ)がその親指から次々と繰り出される。

 

それにしても、臨時編成のグループにも関わらず、この一体感は何だ?まるでいつも一緒いるグループのようだ。

 

レーベル面に WES MONTGOMERY Quintet と記したオリン・キープニュースの気持ちも分かる。

 

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Full House 

US盤

Original Jazz Classics

OJC-106 (RLP-9434)(1984年)

Side1:GP  OJC 106 A-1  A 3

Side2:GP  OJC 106 B-1  D 2


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今から5年程前に、中古レコード店で800円で購入したOriginal Jazz Classicsからの再発盤、通称OJC盤

 

オリジナル盤を手にしたことから、もう用無しか?と思いつつ、改めて聴いたところ、これがかなりの良音。

 

カッティングレベル(音の大きさ)、音圧はオリジナル盤と殆ど変わらない。さらには、高音域のキレの良さ、中音域の適度な膨らみ、低音域の存在感、これらがオリジナル盤と基本的に同じ響きなのだ。

 

演奏している場所の空気感、聴衆の拍手のリアルさなど、音の鮮度はオリジナル盤にはさすがに敵わないが、OJC盤も充分に良い音だと言える。

 

Original Jazz Classicsは、Fantasy Recordsが1983年に設立したレーベルで、同社傘下レーベルのRiversidePrestigeContemporaryなどの名盤を復刻・再発している。

あのオリン・キープニュースが監修を務めており、良い音でかつ安価でジャズの名盤を楽しんで欲しいとのポリシーの下、丁寧に作られている(※)

 

※ オリジナルのジャケットデザインが使われ、レーベル面もそれぞれのレーベルデザイン似せて復刻されている。アナログマスターテープから(デジタルトランスファーされることなく)アナログのままリマスタリングされ、カッティングされている。

 

しかもこのFull Houseは、もともとRiversideオリン・キープニュース自身がプロデュースし、ライナーノーツまで書いているほどのアルバム。かなり思い入れがあるであろうことは想像に難く無い。

 

その彼が監修して復刻・再発したものなのだから、このFull HouseOJC盤、悪かろうはずが無い。

 

 

再発盤の中には、音に芯が無い、音がヘタっている、音の響きが薄っぺらい…など、正直なところイマイチなものも時折ある。

だが、こだわりを持って復刻・再発されたものは、良い音で鳴る。

 

改めて他のOJC盤も聴いてみたところ、1980年代に制作されたものは、かなり良い音で鳴る。

 

私の目の黒いうちは、いい加減なもの世に出さない」とオリン・キープニュースが言ったかどうかは分からないが、こだわりのある人だったのは間違いないだろう。

 

 1953年 Riversideを設立

 1964年 Riversideが倒産

 1966年 Milestoneを設立

 1972年 MilestoneをFantasyが買収

      Riversideの権利をFantasyが購入

      FantasyでA&Rを担当

 1984年 Grammy Award 受賞

 1985年 Landmarkを設立

 1988年 Grammy Award 受賞

 1993年 LandmarkをMuseが買収

 2004年 Grammy Trustees Award 受賞

 2011年 NEA Jazz Masters 受賞

 

彼の経歴を見ると、ジャズに対する貢献の大きさが分かる。

 

ジャズは、こういう人によって名盤が産み出され、そして後世に受け継がれて行くのだな、と思いを馳せながら、Full Houseを聴く。

 

そして「1962年のオリジナル盤1984年のOJC盤、どちらもオリン・キープニュース溢れる思いによって作られた素晴らしいレコードであり、正にFull Houseフルハウスだな…」と思うのだった。(了)

 

Wake of the Flood / Grateful Dead【US盤】

このブログの顔ですが、名前はグレコと言います。

 

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サンフランシスコ、60年代後半にヒッピームーブメントの中心地だったハイト・アシュベリーのお土産屋で出会い、連れて帰ってきたクマです。

 


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 左:サンフランシスコ湾にて

 右:アルカトラズ島にて

 

その後、パリにも連れて行きました。

 


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 左:サクレ・クール寺院にて

 右:凱旋門にて

 冒頭の写真:ムーラン・ルージュにて

 

そうです。グレイトフル・デッド・ベア(※)です。なので、グレコと名付けました。

デッド・ベアダンシング・ベアとも言います。中でも、ぬいぐるみはビーンズ・ベアと言います。

 

このクマグレイトフル・デッドのキャラクターなのですが、ライブの日付を誕生日として、100種類以上あるらしいです。

 

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(ちなみに、私の手元にいるのは、1988年6月28日生まれ(=ライブの日付) の COLD RAIN です。この日のライブは雨だったんでしょうか?)

 

 

グレイトフル・デッドは、1965年にサンフランシスコで結成されたロックバンドです。

 

中心人物であるジェリー・ガルシアの死によって、1995年に解散となりましたが、アメリカの偉大なバンドとして、いつまでも忘れられることはないでしょう。

 

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グレイトフル・デッドの音楽性は、ロック、カントリー、フォーク、ブルース、ジャズ、ブルーグラス、サイケなど幅広く、その演奏は肩の力を抜いたゆるい感じなのですが、何とも言えない自由さを感じます。

Liberty ではなく、Freedom の方の自由です。

 

 

グレイトフル・デッドには、デッドヘッズDead Heads)と呼ばれる熱狂的なファンがおり、ライブの際には、バンドと一緒に全米各地を移動していました。

 

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(著名人のデッドヘッズには、元大統領クリントン氏、元副大統領ゴア氏、元下院議長ペロシ氏、アップル創業者スティーヴ・ジョブズ氏、画家キース・ヘリング氏などがいます。)

 

ライブ会場では録音が許されており、更には商業目的でなければ、ファン同士の録音テープの交換も許されていました。

 

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(会場のあちらこちらに公然と立つマイク録音者はテーパーと呼ばれていました。)

 

録音は海賊盤の温床となるので、アーティスト側は禁止するのが普通なのですが、大らかな話です。

 

ところが、録音とテープ交換を許可した結果、それが返ってファン層を拡げ、ライブやレコードの売上に繋がったのだそうで、ビジネス戦略的にもあり、だった訳です。ファン側・アーティスト側双方にとってWin-Winだった訳で、良い話です。

 

 

グレイトフル・デッドという名前について、Greatful Dead(偉大なる死)と思われている方も多いのではないかと推測しますが(私もそう思っていました...  ジョジョ第5部に出てくるスタンドもそうですし...)、そもそも great はあっても、greatful という単語はありません。

 

Grateful Dead です。感謝する死者恩に報いる死者といった意味だそうです。

 

 

ということで、「レコード評議会」、今回の議題はこちらです。

 

Wake of the Flood

US盤(1973年)

Grateful Dead Records

GD-01

Side1:GD-01-A-M34 [TLC] K-6089 SON

Side2:GD-01-B-M36 [TLC] K-6092 SON


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A1: Mississippi Half-Step Uptown Toodeloo

A2: Let Me Sing Your Blues Away

A3: Row Jimmy

A4: Stella Blue

B1: Here Comes Sunshine

B2: Eyes Of The World

B3: Weather Report Suite:Prelude, Part Ⅰ, Part II (Let It Grow)

 

グレイトフル・デッドの通算10枚目。

Grateful Dead Records での第1弾です。

 

 

Grateful Dead Records は、Warner Brothers から独立して、1973年に設立した自主レーベルです。

自分達の音楽やレコードを自身でコントロールしたいと、米国内では大手会社の力を借りず、レコード製造から配給までの全てを自ら行っていたとのことです。

 

レコードの音質にも強いこだわりがあったようです。

レコード製造の際に金型(スタンパー)を長く使い回すと、音の角が取れてしまい、どうしても音の新鮮さは失われてしまいますが(音がヘタってしまう)、これを嫌った彼らは一定枚数をプレスしたら必ず金型を交換するよう徹底したといいます。

 

そういう背景もあってか、この盤は音がとても良いです。音の粒立ちが良く、各楽器が明瞭に鳴ります。

 

注:ただ、残念なことに、Grateful Dead Records は、スタジオ3作品とライブ1作品をリリースしたものの、ビジネス運営上のストレスや金銭的問題から、1977年に閉鎖となります。さすがに何もかも全てを自ら行うのは大変だったようです。レコード金型の交換にかかるコストも、金銭的に経営を圧迫したらしいです。なお、その後、彼らは大手の Arista Records と契約します。

 

 

グレイトフル・デッドの曲は、強いインパクトを感じさせるものではなく、ゆるい感じなので、一聴してもその良さが分からないところがあります。

ですが、その良さが分かってくると、どの曲も味わい深いと言うか、良い感じになります。

 

このアルバムについても、どの曲も良い感じなのですが、中でも特に好きなのは以下の3曲です。

 

A1: Mississippi Half-Step Uptown Toodeloo


自分達で立ち上げたレコードレーベルの1枚目の1曲目なので、パンチの効いた曲かと思いきや、何ともゆるい感じの曲。でも、そのゆるさが良いのです。

終始オブリガードを入れているフィドルとギターが鮮度の高い音で、その音だけでも良い感じです。

 

B2: Eyes Of The World 

 

彼らの曲の中で、私的ベスト5に入る曲。

気持ち良く刻まれるリズムギターと歌うようなベース。その上に乗って弾かれるギターソロとオブリガード。その飛翔感が素晴らしく、音の粒立ちの良さも相まって、いつまでも聴いていたいと思わせます。

このスタジオバージョンは5分強ですが(フェードアウトします)、ライブでは延々と演奏していたものと思われます(1990年リリースの Without A Net に収録のライブバージョンは16分強あります)

ジャムバンドの元祖と言われるグレイトフル・デッドですが、正にそれを体現しています。

 

B1: Here Comes Sunshine

 

冒頭で wake of the flood, laughing water, forty-nine(’49) ... と歌われますが、アルバムタイトルはここから採られています。

Abbey Road (The Beatles) のB1: Here Comes The Sun を意識して、ここに配置したのではないかと思われます。

ただ、曲調は全く違って、ゆるさ × 浮遊感 (+ サイケ) といった感じです。

この曲の良さは、レコードならではの音の響き倍音成分を感じる響き)があってこそと思いますが、繰り返し聴いているうちに、そのゆるゆるとしたトリップ感アシッド感にいつの間にかハマります。

 

 

最後に、アルバムタイトルやジャケットなどについて、つらつらと考えたことのあれこれで、締めにしようと思います。

 

その1:アルバムタイトル について

 

 アルバムタイトルの Wake of the Flood は、前述の通り、B1: Here Comes Sunshine の歌詞の中から採られています。

 

flood という単語は洪水という意味ですが、the Flood となると、ただの洪水ではなく、旧約聖書の「創世記」ノアの方舟の話)に出てくる大洪水を指すようです。

wake は、目覚めるとか目覚めではなく、結果とか余波(特に破滅的な事象の結果)といった意味です。

とすると、Wake of the Flood というのは「大洪水の爪痕」とか「大洪水後の世界」といったような感じでしょうか。

 

邦題は「新しい夜明け」とされています。

wake を目覚めと訳して(※)、「洪水の目覚め」→「洪水後の翌朝の目覚め」→「(大変なことが起こった後の) 新しい夜明け」としたのでしょうか。

単に、曲名 Here Comes Sunshine から「新しい夜明け」としたのかも知れません。

 

※ wake を目覚めと訳した他の事例としては、In The Wake Of PoseidonKing Crimson)の邦題「ポセイドンのめざめ」というのもあります(本来は「ポセイドンの跡を追って」「ポセイドンに続いて」です)。

 

では何故タイトルを Wake of the Flood にしたのでしょう?

 

思うに、大手会社から独立して全てを自ら運営するなどといった前代未聞の事態(そのようなことをするアーティストは実際いなかった)ノアの大洪水になぞらえて「大洪水後の世界前代未聞のレコード会社 Grateful Dead Records 設立後の現在」といったタイトルとしたのではないでしょうか。

 

そうだとすると、「新しい夜明け」という邦題は、誤訳などではなく、言い得て妙ともいえる名訳ということになります。

 

 

その2:ジャケット表紙の絵 について

 

 

ジャケットの表紙は、新約聖書の「ヨハネの黙示録の中、「最後の審判」のところの一節にインスピレーションを得て描かれたものだそうです。

 

And the sea gave up the dead which were in it, and death and Hades gave up the dead which were in them; and they were judged, every one of them according to their deeds.

海に沈む死者も、死と黄泉の世界にいる死者もよみがえる。そして全ての人々は、その行いに応じて裁きを受ける。

 

この絵から「最後の審判」を直接イメージすることは難しいですが、「昔、ノアの大洪水(背景の波が立つ海の絵)があった。今では麦が取れるようになり、布を被った人がその麦を収穫している。この人は最後の審判ではどのような裁きを受けるのだろう」という絵なのでしょうか。

 

更に言うなら「Grateful Dead Records を設立したが(前述の通りノアの大洪水になぞらえている)グレイトフル・デッドthe dead死者は最後にはどのような評価最後の審判を受けるのだろう」ということを意味しているのでは、と考えてしまいます。

 

 

その3:ジャケット裏面とレーベル面のカラス について

 

 

ジャケット裏面とレーベル面にはカラスが描かれています。

crow(街中にいる小型のカラス)ではなく、raven(野生に生息する大型のカラス)のようです。

この raven は、死や悪病を予兆する不吉な鳥不吉の兆しとされています。

 

自虐ネタ的に、Grateful Dead Records の前途多難、いずれ迎えるであろう死(レーベルの倒産)を予兆するものとして、カラスを描いたのではないでしょうか。

(実際、前述の通り、1977年にレーベルは閉鎖となってしまします。)

 

 

その4:Here Comes Sunshine の歌詞 について

 

Wake of the flood, laughing water, forty-nine(’49)

Get out the pans, don't just stand there dreaming, get out the way

Get out the way

Here comes sunshine

 

この曲は、1948年に起こったコロンビア川の大洪水(当時オレゴン州第2の都市だったヴァンポートの町が壊滅したため、ヴァンポートの大洪水とも言います)を想起して書かれた歌詞らしいです。

ところが、歌詞では forty-nine(’49)=1949年となっています。実際の大洪水は1948年のことなので、記憶違いなのでしょうか?

 

もしかすると、forty-nine(’49)=1849年なのかもしれません。 

1848年にカリフォルニアで金が発見されたことから、金を求めて人々が1849年にカリフォルニアに殺到しましたゴールドラッシュです)

この人々のことを、forty-niners(49ers)と言いますがアメリカンフットボールのチーム名にもなっています)アメリカにとって’49と言ったら1849年を指すのが自然と思われます。

 

更に言うなら、実は forty-nights(40夜) と歌っているのではないかとも思っています。

雨が40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくしたノアの大洪水

Wake of the Flood の the Flood が前述の通りノアの大洪水を指すのであれば、forty-nights(40夜) と歌っていてもおかしくありません。

 

実際に歌を聴いてみると、forty-nine(’49) にも、forty-nights(40夜) にも聞こえます。

 

それによって、歌の意味も全然違ったものになりますが、ダブルミーニング、トリプルミーニングを狙っていたのかも知れません。

 

 

以上、つらつらと考えてみたことのあれこれですが、いかがでしょう。

 

少しはデッドヘッズDead Heads)に近づけたでしょうか。

 

 

12" Singles(1983-1986)/ The Style Council【UK盤】

 スタイル評議会 The Style Council

 レコード評議会 The Vinyl Council

 

The Style Councilスタイル・カウンシル)、ブログのタイトル「レコード評議会」はここから採っている。

 

人気絶頂にありながら、これ以上このバンドでは新しいことが出来ないと、The Jam を潔く解散した Paul Weller が Mick Talbot と組み、ソウルやジャズを取り入れて、色々なスタイルであれこれ演り始めたのが The Style Council

名は体を表す、と言うが、スタイル評議会とは上手い名前だ。

 

このブログも、色々なジャンルのお気に入りのレコードについてあれこれ書く、ということでタイトルを「レコード評議会」とさせていただいた訳だが、我ながら結構気に入っている。

 

将来、英訳されるようなことにでもなれば、タイトルは The Vinyl Council とするつもりだ。120%そんなことは無いが。

 

 

The Style Council、活動していた80年代当時、日本ではスタカンと呼ばれていた(くれぐれもカタンではないので、念のため)

オシャレなグループとして認識されていたように思う。FRED PERRYのポロシャツ姿が思い浮かぶ。

 

だが、歌詞を見ると、反骨精神に溢れたものや反体制的なものが多く、中にはサッチャー保守党政権に反対する姿勢を明確にしているものもある。

 

音はオシャレ系だが、ロック魂に溢れていた。

The Jam で青筋を立ててギターをかき鳴らしながら歌っていたのだから、もともとそうなのだが…)

 

 

ということで、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

今回は、1983年から1986年に英国でリリースされた The Style Council12インチシングル特集。

 

CDではなく、レコードでも聴きたいと思い、コツコツと集めてきたのだが、やっぱりレコードは音が良い。音に芯があるし、キレも一段上だ。しかも45回転の威力なのか、音が濃密だ。

 

レコードのおかげで、見直した曲もいくつかある。

特に気に入っている曲についてコメントしていくこととしよう。

 

 

TSC 1(Mar 12, 1983)← 7"シングル(12"はありません)

A: Speak Like A Child

B: Party Chambers

 

 

TSCX 2(May 21, 1983)

A1: Money Go Round

B1: Headstart For Happiness

B2: Mick's Up


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A1: ギター(カッティング)、ベース(スラッピング)、ドラム、ホーンセクションが活躍するファンク・ナンバー。ただ、黒くはない。ホワイト・ファンクなどという言葉があるのかどうか分からないが、そんな感じで、それがまた良い。正直繰り返しだけの退屈な印象だったが、レコードで聴いて初めてそのカッコ良さを知った。

 

B1: Café Bleu (1stアルバム)に収録のアルバムバージョン(ドラム、ホーン、女性コーラス付き)と違い、アコギとオルガンとボーカルだけの演奏。デモトラックっぽいが、個人的にはこちらの方が好み。

 

 

TSCX 3(Aug 6, 1983)

à Paris

A1: Long Hot Summer (Extended Version)

B1: Party Chambers

B2: The Paris Match

B3: Le Départ


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アルバムのように à Paris というタイトルが付いている。ジャケットもパリでの写真。

 

A1: 正直に言えば退屈な曲と思っていたが、レコードで聴いて「こんな良い曲だったっけ?」と改心した。Marvin GayeSexual Healing にインスパイアされたようなブラック・コンテンポラリー(ブラコン)。シンセベースも悪くない。レコードの音の良さ故だろう。

 

B2: 終始流れるアコーディオンと後半で歌われるフランス語からパリの雰囲気が香るシャンソンの名曲。何となく、The BeatlesMichelle を思い起こさせる。Café Bleu に収録のアルバムバージョン(女性ボーカルバージョン)も味わい深い。

 

 

TSC 4(Nov 12, 1983)← 7"シングル(12"はありません)

A1: A Solid Bond In Your Heart

B1: It Just Came To Pieces In My Hands

B2: A Solid Bond In Your Heart (Instrumental)

 

 

TSCX 5(Feb 11, 1984

A1: My Ever Changing Moods (Long Version) 

B1: Spring, Summer, Autumn

B2: Mick's Company


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A1: Café Bleu に収録のアルバムバージョン(ピアノとボーカルのみ)と違い、こちらはバンド演奏バージョンで女性コーラスも付いている。歌詞の内容からすると、アルバムバージョンの方が合っていると思うが、こちらのアレンジもカッコ良く、両方とも好きだ。最もスタカンらしさが出ているポップ・ナンバーで、スタカンと言えばこの曲が浮かぶ。

 

 

TSCLP 1(Mar 17, 1984)←1st アルバム

Café Bleu

Side A: Mick's Blessings / The Whole Point Of No Return / Me Ship Came In! / Blue Café / The Paris Match / My Ever Changing Moods / Dropping Bombs On The Whitehouse

Side B: A Gospel / Strength Of Your Nature / You're The Best Thing / Here's One That Got Away / Headstart For Happiness / Council Meetin'

 

 

TSCX 6(May 19, 1984

Groovin' 

A1: You're The Best Thing (Long Version)

A2: You're The Dub Thing

B1: The Big Boss Groove


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これもアルバムのように Groovin'  というタイトルが付いている。

 

A1: Café Bleu に収録のアルバムバージョンよりもストリングスが豊富に入っている、フィラデルフィア・ソウルフィリー・ソウルのリミックス。ファルセットで歌っているのもそれっぽい。こちらのバージョンの方が好み。

 

B1: レーベル面にAAとあるので、いわゆる両A面盤というやつ。シャッフルビートの R&Bナンバー。演奏するのに自由度が高いからか、ライブではよく演奏されていたようだ。

 

 

TSCX 7(Oct 6, 1984

A1: Shout To The Top

A2: Shout To The Top (Instrumental)

B1: The Piccadilly Trail 

B2: Ghosts Of Dachau


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A1: ストリングスが活躍するブルー・アイド・ソウルのヒットナンバー。スタカンの中では一番有名なのでは?ポップ過ぎて少し気恥ずかしい感じもしていたのだが、レコードで聴くとストリングスのキレの良さが最高で、やっぱり良い曲だな、と。

 

B1: ボサノバ風のリズムが良い感じ。パーカッションもアクセントが効いている。ギターもオルガンもセンスが良い。B面で目立たないのが勿体無い。隠れ名曲

 

 

TSCX 8(May 4, 1985)

A1: Walls Come Tumbling Down! 

A2: Spin' Drifting 

B1: The Whole Point II

B2: Blood Sports


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A1: Our Favourite Shop (2ndアルバム)の先行シングル。サッチャー政権下のこの当時、英国の失業率は最悪で、それに対する明らかなプロテストソング。ある意味、最も Paul Weller らしい最高にロックな一曲

 

やってみるか、それとも無為な日々を過ごすか / 物事は変えられる、壁は崩せるんだ

わかるか、階級闘争は神話の世界のことじゃない、現実のことなんだ / ジェリコの戦いのように、壁は崩せるんだ

体制だろうと制度だろうと変えられる 、強い団結さえあれば / 今の状況は変わる、きっと壁は崩れる (※)

 

※ Governments crack and systems fall - 'Cause Unity is powerful / Lights go out - Walls come tumbling down!

直訳すると「団結が強ければ、政府は砕け、制度は壊れる / 事態は一変する、壁は崩れる」。シビレる歌詞だな(放送禁止にならなかったのかな?)

 

タイトルは、黒人霊歌ジェリコの戦い」から採られている。そう言えば、コーラスの掛け合いがゴスペルっぽくもある。

 

Joshua fit the battle of Jericho

And the walls come tumbling down

 

ジェリコの戦い」は、旧約聖書の中のヨシュア記における、ヨシュアが約束の地(神がイスラエルの民に与えると約束した土地、Promised Land)であるカナンを手にするべく、ジェリコ(エリコ)の砦を攻略した時の様子を歌にしたもの。ヨシュアの軍がラッパ(角笛)を吹きながら行進すると、城壁は崩れ落ちたという。なるほど、この曲のアレンジでトランペットが使われているのも、ラッパになぞらえているという訳だ。

 

A2: ギター、ベース、オルガン、ドラム、ボーカルとシンプルなアレンジのポップ・ナンバー。シンプル故に曲の良さが際立つ。メロディの良さはスタカン中でもトップクラス。ヒットを狙うA面ではないし、曲調が合わないからアルバムにも入れられないしで、シングルB面となっているものの、実は良い曲と言うのがあるが、正にそれ。かなりの隠れ名曲

 

B1: Café Bleu (1stアルバム)に収録されている The Whole Point Of No Returnナチュラルトーンのギターとボーカルのみ)のリメイク。ドラムとヴィブラフォンのような音が入ったジャジーなアレンジ。粋なアレンジでこちらの方が好み。

 

 

TSCLP 1(Jun 8, 1985)←2nd アルバム

Our Favourite Shop

Side A: Homebreakers / All Gone Away / Come To Milton Keynes / Internationalists / A Stones Throw Away / The Stand Up Comic's Instructions / Boy Who Cried Wolf

Side B: A Man Of Great Promise / Down In The Seine / The Lodgers (Or She Was Only A Shopkeeper's Daughter) / Luck / With Everything To Lose / Our Favourite Shop / Walls Come Tumbling Down!

 

 

TSCX 9(Jun 29, 1985)

A1: Come To Milton Keynes

A2: Our Favourite Shop (Club Mix)

B1: (When You) Call Me

B2: The Lodgers (Club Mix)


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A1: Our Favourite Shop からのシングルカットだが、何となくシングル向きに思えないのは何故?途中4ビートの部分はスイング・ジャズっぽい。The Village Green Preservation Society (The Kinks) に通じるものも感じるし、Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (The Beatles) の音作りも思い起こされる。いずれ、英国ならではのサウンド

 

B1: シンセベース、打ち込みっぽいアレンジで時代を感じさせるが、きれいなメロディのミディアムバラード。アコースティックなアレンジだったら相当な名曲になっていたのでは?と思う。

 

 

TSCX 10(Sep 21, 1985)

A1: The Lodgers (Extended Mix)

B1: The Big Boss Groove (Live)

B2: Move On Up (Live)

B3: You're The Best Thing (Live)

B4: Money-Go-Round Medley (Live)


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A1: Our Favourite Shop からのシングルカットではなく、再録バージョン(A NEWLY VERSION PRESENTED TO YOU BY PUBLIC DEMAND / 皆様のご要望によりお送りする新バージョン とジャケットにある)。こちらの方がややアップテンポ。洗練されたソウルフルなナンバー。

 

なお、この曲は、Our Favourite Shop のインナースリーヴに The Lodgers (Or She Was Only The Shopkeeper's  Daughter) と表記されている。サッチャー首相のことを指して、ただの店主の娘だったんだろ、と音はオシャレなのに言葉はキツい。

 

同時代の英国バンド The Blow MonkeysShe Was Only A Grocer's Daughter(1987年の3rd アルバムタイトル、ただの雑貨屋の娘だったんだろ)と同じような言葉で扱き下ろしている。この言い回しは、当時の英国で流行っていたのかね?

 

B面は45回転ではなく、33回転。リバプールマンチェスターでの1985年のライブ。ジャケット裏面下に「東京、ニューヨーク、パリ、ローマ、他皆さんのことも忘れていないよ」と書いてある。ライブでの写真も載っているが、キーボードはKAWAIが使われていたんだな。B2は Curtis Mayfield のカバーだが、The Jam の Beat Surrender の12インチシングルにも収録されている(よっぽど好きなのだな)

 

 

CINEX 1(Mar 26, 1986)

A1: Have You Ever Had It Blue (Uncut Version)

B1: Have You Ever Had It Blue (Cut Version)

B2: Mr Cool's Dream


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当初は TSCX 11 とする予定だったが、Absolute BeginnersDavid Bowieらが出演の映画)のサントラに収録の曲ということで、CINEX 1 となったらしい。それで、TSCX 11 は欠番、次のシングル It Didn't Matter (※) は TSCX 12 となった、と。

マクセル・カセットテープのCMで使われていた(本人達も出演していた)。

 

A1: Our Favourite Shop の収録曲である With Everything To Lose のリメイク(歌詞とアレンジが違う)。ジャケットを見て驚いた。「Arrenged By Gil Evans」とある。あの Gil Evans(ジャズ界では超有名なアレンジャー)がアレンジしているのか!と、かなり吃驚。ジャズ・ボッサ風 × 豪華なホーンセクション + 女性コーラス。ゴージャスかつオシャレなアレンジだ。

 

 

スタカンの活動期間は1983年から1989年までだが、お気に入りなのは、ここで記載した1983年から1986年までのものだ。

これ以降になると、洗練度合いが更に進み、その代わりに熱いものが少し薄れてしまったような感じがする。また最後にはアシッド・ジャズやハウスにまで行ってしまう。

 

Paul Weller のことを信頼しているので、どんなスタイルになってもOKと思っている。

だが、1983年から1986年までが、様々なスタイルの中で、洗練情熱が絶妙なバランスで並存していたと思う。

オシャレだけど、熱いロック魂を持っている、この時期のスタカンが好きだ。

 

 

最後に、以上の特に気に入っている曲(16曲)を、好きな順に並べてみた。

 

 1. Walls Come Tumbling Down!

 2. My Ever Changing Moods

 3. The Paris Match

 4. Spin' Drifting

 5. The Whole Point II

 6. Money Go Round

 7. You're The Best Thing

 8. Shout To The Top

 9. The Piccadilly Trail

10. The Lodgers

11. Have You Ever Had It Blue

12. Long Hot Summer

13. Headstart For Happiness

14. Come To Milton Keynes

15. The Big Boss Groove

16. (When You) Call Me

 

 

それにしても、今回の記事は「評議会」というより、ただの私のお気に入りの紹介になってしまったな、と。

 

まあ、Our Favourite Shop ならぬ My Favourite Shop ということで。

 

サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付」 / ジョルジュ・プレートル指揮 パリ音楽院管弦楽団(フランス盤)

サン=サーンス交響曲第3番「オルガン付」、この曲を最初に聴いたのは、中校生の時。

試験勉強の際、カセットテープに録音した音楽をヘッドホンで聴きながら机に向かっていたものだが、この曲もよく聴いた。

 

オルガンが荘厳に鳴り響く第二楽章後半(実質第四楽章)は、素直に感動的だ。

かなり有名でもある。TVアニメ「ルパン三世 (第2シリーズ) 」でも使われている。しかも3回も(悪魔がルパンを招くとき、1999年ポップコーンの旅、死の翼アルバトロス)。実際TVで視た(聴いた)記憶がある。

 

有名な曲だけに録音も多いが、

 ミュンシュボストン交響楽団

 オーマンディフィラデルフィア管弦楽団

 アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団

 デュトワモントリオール交響楽団

といったところが定番ではないかと思う。

 

 

さて、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

Saint-Saëns

Symphonie N°3 en ut mineur avec Orgue

Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire

Maurice Duruflé aux Grandes Orgues de l'Eglise St Etienne du Mont

direction Georges Prêtre

 

フランス盤(1963年 (1964年?) )

Pathé Marconi (Les Industries Musicales Et Electriques Pathé Marconi)

La Voix De Son Maître

CVB 1792

Side1:2YLA 1210 21 M6 257781 P

Side2:2YLA 1211 22E M6 257782 P


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ジャケットに記載されているフランス語を転記してみた。訳すとこういうこと。

 

サン=サーンス作曲

交響曲第3番「オルガン付」

パリ音楽院管弦楽団(直訳すると(パリ)音楽院演奏会協会管弦楽団の演奏

モーリス・デュリュフレによるサンテティエンヌ・デュ・モン教会パイプオルガンの演奏

ジョルジュ・プレートルの指揮

 

 

サンテティエンヌ・デュ・モン教会は、パリのパンテオン近くにあるカトリック教会。

パリの守護聖女サント・ジュヌビエーブが祀られている。

哲学者・数学者パスカル(「人間は考える葦である」、パスカルの定理、パスカルの原理で有名)や劇作家ラシーヌの墓もある。

墓地にはフランス革命指導者の一人マラーが埋葬されている。

 

なお、ジャケットの絵は、サンテティエンヌ・デュ・モン教会を描いたものか?と思ったら、モネの「ルーアンの大聖堂」とのこと。

 

サンテティエンヌ・デュ・モン教会

外観Wikipediaより)

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内部(同上)

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パイプオルガン(同上)

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オーケストラ演奏の録音は、サル・ワグラム(Salle Wagram、クラシックの録音でも有名なホール)で行われたらしいのだが、オルガンについては、このサンテティエンヌ・デュ・モン教会パイプオルガンで演奏された音が収録されているということ。

 


次に触れておきたいのが、ジャケットとレーベル面にあるこのロゴ。


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犬の名前はニッパーNipper。亡き飼い主の声が聴こえる蓄音機を不思議そうに覗き込んでいる姿を描いたもの。

La Voix De Son Maître は、英語に訳すと、His Master's Voice(彼のご主人の声)

 

この His Master's Voice、各国毎に翻訳されている。

以下写真にある、英語フランス語イタリア語ドイツ語のレコードは実際に持っている。スペイン語ポルトガル語スウェーデン語、ポーランド語、ノルウェー語、トルコ語、中国語もあるらしい。)


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初めて見た時は「そうなんだ、面白いなぁ」と吃驚と言うか、少し感動した。

因みに、His Master's Voice の略称 HMV は、大手CDレコード店 HMV のもととなっている。

それと、このロゴは今でもビクターブランドで使われている。


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注:His Master's Voice のことを詳しく書くと(Berliner Gramophone、Victor、RCAHMV、EMI、Pathé Marconi ...)、それだけで膨大になるので、ここには書きません。

 

さて、このレコードなのだが、手にするまでにかなりの道のりを経ている。


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① La Voix De Son Maître / CVB 1792:2枚

フランス オリジナル盤(ステレオ)。このブログに記載のレコードと同じもの。1963年(もしくは1964年)の発売。

 

② La Voix De Son Maître / ASDF 792:1枚

フランス dowel spine盤(内袋の右端に黒い木製の丸棒が取り付けてある)。マトはオリジナル盤と同じ(特別仕様として発売されたもの?)

 

③ La Voix De Son Maître / CVL 1792:3枚

1970年代のフランス再発盤。マトはオリジナル盤と同じ。

 

④ La Voix De Son Maître / 2C 069-1060:3枚

1970年代のフランス再発盤。カッティングし直したもの(オリジナル盤はチューブカット(真空管カット)だが、こちらは恐らくトランジスタカット)

 

⑤ Angel Records / S35924:1枚

1960年代のUSオリジナル盤。米国でカッティングされたもの。

 

そもそも偶々④を購入したのが、ことの始まり。その演奏内容に心を奪われた。

そして、より良い音で聴きたい、一番良い盤を手にしたい、と思い、中古レコ屋で見つけては買い、オリジナル盤を求めてDiscogsで海外から取り寄せたりした。

 

ただ、納得のいくものを手にするまで、その道のりは長かった。

 

音は鮮明で素晴らしいのに、いいところで目立つ周回ノイズがある(興が削がれる)。

傷の類は一切無いものの、プレス枚数が嵩んだことが原因なのか、溝がヘタっている感じがする(感動が薄れる)。

全く悪くないが、もう一段上の音がする盤がある気がする(…どうしたものか)。

 

好きな曲、好きな演奏なだけに、少しでも気になってしまうともういけない。

そして「意地でも、納得できるものを手に入れる」と、手にしたレコードは累計10枚。

Discogsで注文したら、違うものが来た、ということもあった(たまにある…)。

 

そして、足掛け3年、11枚目にして、ついに納得できるものを手に入れた。

 

それまでの10枚は、呪いを断ち切るべく(笑)、思い切って全て売却した。そもそも購入価格は全て1千円前後だったのだが、買取価格は様々で、中には買取価格の方が高いものもあった。中古レコードの価格はホント色々です。

 

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で、肝心の演奏と音は、と言うと、これがもう素晴らしいの一言。

 

まず、演奏については、

パリ音楽院管弦楽団は、正に古き良きフランスの音色で少し古色然とした感じだが、それ良い。アメリカのオーケストラとは全く違う音がする。)

 

ジョルジュ・プレートルは、このレコードで初めて知った指揮者なのだが、彼のアーティキュレーションは私の感性に合うのだろう、最初から最後まで強い説得力を感じる。

 

モーリス・デュリュフレは、1929年から1986年に亡くなるまでサンテティエンヌ・デュ・モン教会のオルガニストの地位にあり、その人の演奏だけに間違いはない。

 

そして、音そのものについては、

弦楽器が静かに演奏するところでは、空気が細かく震えるように響く。

管楽器、特にホルンが力強く演奏するところでは、倍音成分が豊富に響く。

トロンボーンの低音が凄い。スピーカーがビリビリと響く。

パイプオルガンの重低音が凄い。空気がズーンと響く。

 

交響曲「オルガン付」という名の通り、パイプオルガンが鳴り響く。

サンテティエンヌ・デュ・モン教会のパイプオルガンの荘厳な響きに空気が震える。

 

オーケストラの演奏は上品な残響があるのだが、その雰囲気はまるで教会で演奏しているかのような感じだ。

自分の脳内には、サンテティエンヌ・デュ・モン教会の中でオーケストラとパイプオルガンが一緒に演奏している絵が浮かんでいる。

 

この交響曲標題音楽ではなく、絶対音楽なのだろうが、宗教音楽・教会音楽のようでもある。

「人生の困難に直面し、苦しみながらも、それを乗り越え、最後には高みに達する(神に近づく)」といった感じの構成・曲調で、パイプオルガンが入っているためか、尚更そう感じさせる。

 

なかなか上手く言い表わすことが難しいので、もうこの辺で止めておくが、ともかくこのレコードは曲自体も、演奏も、音そのものも素晴らしい。

 

特にクライマックスの第二楽章後半は、決して急ぐことなく、一歩一歩進むかのようなテンポで、それが本当に素晴らしい。

スピーカーを前に真剣に聴いていると、首の後ろがジーンとしてくる。涙が出てくるほど。

 

交響曲「オルガン付」の名盤と評されているものの中に、この盤が入っているのを見たことが無い。それどころか、殆ど知られていないのではないか、とも思われる。

 

だが、個人的にはこれ以上の盤は無い。

私的「超名盤」(名盤を超えた名盤)だ。

出会えて良かった、と心底思う。

 

よく「自分が死んだら一緒に棺桶に入れて欲しい」という台詞があるが、そんな感じだ。

 

でも、そんなことをしてはいけない。

このレコードは今から50年以上も前のものだが、それが今、感動を与えてくれる。

ならば、今から50年後、100年後も、誰かに感動を与えることだろう。

そのためにも、このレコードは後世に残さねければならない。

 

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芸術や文化は後世に受け継がれてこそ。

レコードも同じ。

Still Life (Talking) / Pat Metheny Group【US盤】

Still Life (Talking)

US盤(1987年)

Geffen Records

GHS 24145

Side1:GHS-2-4145-A-DMM SR-1-DMM MASTERDISK SP1-1
Side2:GHS-2-4145-B-SR1-DMM MASTERDISK


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先の記事で Letter From Home についてあれこれ書いた。

これ良いですよ、とCDを貸してもらったのをきっかけにすっかり魅了されてしまった訳だが、同時にこちらの Still Life (Talking) も貸してもらっていた。

 

ただ、Letter From Home の方は聴いて直ぐに「こんな音楽があるのか…」と虜となった一方で、Still Life (Talking) の方は正直に言うと最初はよく分からなかった。

 

Minuano (Six Eight) や Third Wind は、後に別格扱いで好きになるのだが、組曲のように変化していく曲調に、当時の「ロック耳」ではついて行けず、「?」という感じだった。

 

また、このアルバムはブラジル音楽との融合と言われるが、土着性を感じさせるメロディとリズムが、これまた「ロック耳」にはよく分からなかった。

 

同じ Pat Metheny Group でも、

 Letter From Home →

 Still Life (Talking)  → ?

だった訳だ。

 

しかし、自分でもCDを購入して繰り返し聴いているうちに、耳が出来てきたのだろう、気が付くと 超・愛聴盤となっていた。

 

So May It Secretly Begin や Last Train Home も名曲だが、個人的には前述の通り、別格扱いの曲が、Minuano (Six Eight) と Third Wind 。

 

今回記事を書いていて気が付いたのだが、Minuano(ミヌアノ:ブラジル南部からウルグアイにかけての地域に吹く冷たい風)、Third Wind(第三の風?、何か南米に謂れのある風なのか?)ともに、「風」がタイトルとなっている。

 

ブラジル音楽を取り込んだ多彩な音とリズム、多様な楽器が織りなす構成美、劇的な展開。

繰り返し聴いているうちに分かってきて、改めて思った。「こんな音楽があるのか…」と。

 

ピーター・バラカン氏は、Miles DavisIn A Silent Way をして「一家に一枚あるべき傑作」とか「これを聴けば人生が変わる」と言っているが、Still Life (Talking) についても正に同じことを言いたい。

 

 

...で、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

今から10年前の2012年にレコードを改めて聴くようになったのだが、Letter From  Home だけでなく、Still Life (Talking) もレコードで聴きたい、と思った。

 

が、そう簡単に手には入らない。

当時はまだeBay(レコードが出品されているとは知らなかった)やDiscogs(存在すら知らなかった) を使ったこともなく、レコ屋で地道に探すしかなかった。

 

しかし、そもそも1987年と音楽メディアがCDに移行している中、アナログレコードとしてのプレス枚数が多いとは考え難く、且つこのアルバムをレコードで持っている人が手放すとは考え難い。

 

半ば諦めつつも、いく先々のレコ屋で、Jazz・Fusion - Guitar - Pat Metheny の棚のチェックだけは欠かさず行っていた。

 

そして、探し始めてからを5年経ったある日のこと、ついにディスク・◯ニオンの棚にそれはあった。遂に見つけた。即購入した。

待てば海路の日和あり、だ。

 


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針を下ろすと、…素晴らしい響きだ。

 

Minuano (Six Eight) :テーマに入る直前のシュポッという音(シャンペンの栓を抜いた時の音?、何の音なのだろう?)がとても立体的だ。風のようなシンセの飛翔感が素晴らしい。テーマを歌うヴォイスがよく伸びる。中間部のマリンバの粒立ちが良い。ベースの鳴りが深い。

 

Last Train Home:ドラムのブラシワークが繊細で、ブラシが見えるようだ。遠くで鳴る汽笛が明瞭で、開けた大地を走るアムトラックが遠くに見えるようだ(←ミズーリ州リーズ・サミット辺りを走るアムトラックね)

 

Third Wind:ギターの粒立ちが良く、疾走感が際立っている。中間部のドラムとパーカッションの躍動感が凄い(←半端なく凄い)。シンセギターの響きが分厚く、咆哮しているようだ。最後の盛り上がりは、音の洪水といった感じだ。

 


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そして、今回記事を書くに当たってクレジットを確認すると、 

Original Mastering: Bob Ludwig, Masterdisk

 

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Letter From  Home と同じく、Bob Ludwig がマスタリングをしていた。

 

RLの刻印は無いので、カッティングはしていないようだが、Nightfly / Donald Fagen のようにカッティングも手掛けていたら...、と無いものねだりをしてみたくなる(Led  Zeppelin Ⅱ のようにラウドカットだったら、なお面白いだろうな)。

 

Bob Ludwig のマスタリングということもあって、CDも結構良い音しているのだが、やっぱりレコードは更に一段と素晴らしい響きがする。音に込められた説得力が一段上だと思う。

 

アナログレコードは、すごく簡単に言ってしまえば「塩化ビニール製のレコード盤に刻まれた溝をレコード針がなぞることで音が出る」。

言い換えれば「塩化ビニール製の円盤と金属針が物理的に接触することで音が出る」。

 

弦楽器や打楽器は「物と物が物理的に接触することで音が出る」楽器と言えるが(ヴァイオリンの弦と弓、ギターの弦とピック(指)、ピアノの弦とハンマー、ドラムの皮とスティック、ヴィブラフォンの音板とマレット)、そういう意味で言えば、

レコードは楽器なのだ。

 

レコードの音が、CDやストリーミングに比べ、その説得力が一段上なのも頷ける。

 

と、まあ、戯れ言はともかく、好きなアルバムが素晴らしい音で聴けるのはこの上なく嬉しいことだ。

 

 

最後に...

Still Life (Talking)、このアルバムは「一家に一枚あるべき傑作」であり、「これを聴けば人生が変わる」が、我が家には一枚のみならず、レコードとCDを合わせて全部で4枚ある。

このアルバムを聴いて人生が変わった証である(笑)。

 

・レコード(ここで紹介したレコード、2017年購入)

・リマスターCD(2006年リリース、同年購入)

・自分で購入したCD(1992年購入)

・当初貸してもらったCD

 

 

Letter From Home / Pat Metheny Group【US盤】

Letter From Home

US盤(1989年)

Geffen Records

GHS 24245

Side1:GHS-224245-A-SR1-DMM MASTERDISK DMM SP1-1

Side2:GHS-24245-B-SR2-DMM SP1-1 MASTERDISK DMM


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中学生の頃から音楽を聴き始め、学生時代はクラシックロックとを並行して聴き散らかしていた。

 

クラシックベルリオーズ、リスト、ワーグナーマーラーチャイコフスキーラヴェルストラヴィンスキーラフマニノフプロコフィエフショスタコーヴィチレスピーギ、他

☝︎ これら作曲家の専らオーケストラものを聴いていた。

 

ロックビートルズザ・フーストーンズ、クリムゾン、ツェッペリン、パープル、レインボー、ホワイトスネイク、インギー、スタカン、ブロモン、デュラン、スミス、トーキング・ヘッズ、プリンス、他

☝︎ 基本、英国ものを聴いていた。(一部例外を除き、当時は「米国はダサい」と言ってあまり聴かなかった。→その後改心して、今はよく聴いています。)

 

社会人になってからも、あれこれトライした。(中でもザッパ、特にジャズ・ロック路線は新鮮だった。現代音楽のような音使い、変拍子、時に超テクニカルな演奏。エキセントリックな音楽だが、妙にハマった。)

 

だが、どうにも行き詰まりを感じ始めていた。

 

そんな中、出会ったのが、Pat Metheny Group (パット・メセニー・グループ)の Letter From Home。これ良いですよ、とCDを貸してもらったのが始まり。

 

最初の曲 Have You Heard。高度な演奏、洗練されたアレンジ。疾走感、スピード感。軽やかさ、爽やかさ。しかも、よくよく聴いてみると7/4拍子。それにもかかわらず、流れるようなメロディで、変拍子であることを全く感じさせない。…こんな音楽があるのか。

 

Pat Metheny / guitar:ナチュラルトーン複雑なフレーズが高速で流れるように奏でられる。疾走感、スピード感はあるのだが、ロックの速弾きギターとは全く違う。リッチーやインギーの速弾きは如何にも「速弾き」なのだが、それとは全く違って、速いということを感じさせない。

 

Lyle Mays / piano, keyboards:音使い、音色が美しく、綺麗。シンセの音は風が吹いているようで、浮遊感もある。曲全体のトーンをまとめているのはこの音だと思う。

 

Steve Rodby / bass:決して目立たず、前に出ることはないのだが、このベースの音が無かったら、曲が軽くなり過ぎてしまうだろう。音楽を底から支えている

 

Paul Wertico / drums:軽やかなスネア、繊細なシンバルワークが曲に推進力疾走感をもたらしている。手数も多く、超テクニカルなのだろうが、それを感じさせない。

 

Armando Marçal / percussion:要所要所で入るブラジルフレーバーのパーカッション。譜割り出来なさそうなリズム。この人ならではのリズムなのだろう。なくてはならない音。

 

Pedro Aznar / voice, etc.:テーマ2回目から入ってくる歌声。歌詞は無く、声が楽器のように響く。声(voice)という楽器と言うことか。濁りのない澄み切った天使のような声

 

続く Every Summer Night。少し昔を思い出しながら、懐かしむような雰囲気の曲。田舎でもないけど、都会でもない街。真夏の夜、夕暮れからもう少し暗くなった夜に差し掛かったところ。人の数は少なくもなく、少しざわついている。そんな風景をひとり眺めている。そんなイメージ。Montreal International Jazz Festival に捧げた曲なのだそう。何となく納得。

 

こんな調子だといつまでも終わらないので、あと一曲 Dream Of The Returnスペイン語で歌われる。歌詞の内容は分からなくても、澄み切った天使の声に心が洗われる。意味もなく涙が出てくるほど。中間のシンセギターによる飛翔感のあるソロも素晴らしい。

(軽い感じがするので、こういう表現はあまりしたくないのだが、「珠玉の名曲」と言って良いと思う。)

 

魅了され、自分でもCDを買い、以前の作品も遡りつつ、新譜が出る度に聴いていったのは言うまでもない。

 

 

...で、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

この音楽(CD)に出会って数年、1995年と記憶しているが、大阪心斎橋の輸入CD・レコード店でこのアルバムのアナログレコードを見つけた。

 

その頃はレコードプレイヤーも手元になく、買っても聴くことは出来ないのだが、買った。大きなジャケットに惹かれたのと、将来レコードプレイヤーで聴く機会もあろうか、と思ったのだ。

 

中古ではなく、新品だった。1,200円位だったと記憶している(Discogsでは現在少なくとも6〜7,000円、その倍以上での出品もある)

 


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時は過ぎて、2012年にアナログプレイヤーを入手した。

 

そう言えば昔に買ったな、と仕舞い込んでいたレコードを17年ぶりに取り出す。ついにこのアルバムをレコードで聴くことが出来る。

 

レコード盤に針を下ろすと、ハイレゾ系の音が出てきた。言ってみればスーパーオーディオCDのような感じ。CDと比べると、音はやや柔らかい印象だ。

 

そもそもデジタルレコーディングなので、CDの音も悪くない。レコードとCD、それぞれ良さがあるな、と。

(アナログレコーディングの音源をデジタル変換してCDにした場合、マスタリングが上手くないと薄っぺらな音になるが、デジタルレコーディングのものはそんなことはあまり無く、総じて良い音がする。)

 


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…更に時は過ぎて、2020年のこと。新品のレコードは綺麗に見えるが、製造工程で使われた剥離材が残っているので、クリーニングした方が音が良くなる、といった記事を読んだ。

 

そうなんだ、でも中古盤は買ってきたら全てクリーニングしているしな。

 

…ん? Letter From Home は新品を買ったんだよな…クリーニングしたっけ?

 

クリーニングしてみた。アルカリ電解水を吹きかけて、極細歯ブラシでレコード溝の奥の不純物を取り除く。最後は水で洗い流し、マイクロファイバークロスで水分を拭き取る。

 

そして針を下ろすと、なんと全然違う音が出てきた。

 

音の鮮明度が向上し、ギターやキーボード、ヴォイスがよく伸びる

音の粒立ちが良くなり、ベースや打楽器がよく跳ねる

何より格段に音像が拡がって、ふわっとした空間が感じられる

 

これが、このレコードの本当の音なのか…

当初手に入れた時から25年後(四半世紀)に、その本当の音を聴くことになるとは…

 

 

そして、2022年。今回この記事を書くに当たって、改めてクレジットを見てみたところ、レコードジャケット裏面に

Mastered by Bob Ludwig, Masterdisk

と記載されている。確認すると、CDにも同じく記載されている。

 

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そうなの?! 

つまり、このアルバムの音はBob Ludwig(*)がマスタリングをしたものということだ。

 

Bob LudwigRobert C. Ludwig、ロック・ポピュラー界で絶大な信頼を寄せられているマスタリングエンジニアの名匠(ジャズ界で言えば、Rudy Van Gelderのような存在)。彼がマスタリングやカッティングを手掛けたものは、良い音が保証されている、と言っても過言ではない。Led Zeppelin、Rolling Stones、Steely DanDonald Fagen といった辺りの仕事が有名なのではないでしょうか。

 

レコードのカッティングには携わっていないようだが(RLの刻印は無い)、マスタリングは彼がしていたのか...

ここでも仕事をしていたとは、Bob Ludwig... 

 

本当に驚いた。音が良いのも大いに納得。

 

それにしても、このアルバムは1989年の作品。メディアはCDに完全に移行しており、殆どアナログレコードは製造されていない時代なのに、わざわざレコードでも発売するとは。

 

Bob Ludwig がマスタリングした音をアナログレコードで出さない訳にはいかない、とうことか。

 

 

...ということで、1995年に手にしたレコード、その本当の音、その背景、その真価を、四半世紀経った今になって知るに至り、何とも言えない感慨に耽っている(←大仰な)。

 

The Royal Scam / Steely Dan【US盤、UK盤、イスラエル盤】

 


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Steely Danスティーリー・ダン)の 5thアルバム The Royal Scam

アルバムタイトルを直訳すると王様の詐欺高貴な詐欺一流の詐欺といったところだが、邦題は「幻想の摩天楼」。

どこをどうやっても、幻想の摩天楼にはならない。収録曲の中にも摩天楼(skyscraper)は出て来ない。

 

「インディじゃないんですから、タイトルで詐欺はマズイですよね」「一流の詐欺とか書いた帯を付けて店頭に置けないよなぁ」「こんなジャケットなので、幻想の摩天楼はどうですか、摩天楼はAORっぽいですし」と日本のレコード会社(日本コロンビア?)が付けたのだろう。

 

まあ、フェイゲンベッカー"外す"のが好きそうなので、幻想の摩天楼、気に入ってくれたのではないか、と。

 

タイトルのみならず、全ての曲に邦題が付けられているが、中でも以下が秀逸(歌詞の内容から付けられたのだろうが、まるで昭和の映画館の看板のようだ。が、このセンスは嫌いではない)

 

滅びゆく英雄 - Kid Charlemagne

最後の無法者 - Don't Take Me Alive

狂った町Sign in Stranger

裏切りの売女 - Everything You Did

 

曲としては、滅びゆく英雄(←えらい大仰だ)がダントツに素晴らしい。クラビネットの刻む様な音から始まり、ドラムが入ってくるところは、これ以上の演り方は無いといった感じ(実際、後のライブ盤でもこのノリは再現できていない)。その後もバーナード・パーディが刻むドラム、チャック・レイニーが弾くベースが正にグルーヴを体現している。

 

そして、何と言ってもラリー・カールトンのギターソロ。彼のギターソロの中でも屈指の名演、ベストの演奏とされているが、これを聴いてしまうと、これ以外は考えられない。

 

次に個人的に好きな曲は、最後の無法者(←西部劇映画かよ)。初っ端からラリー・カールトンのギターソロが炸裂する。滅びゆく英雄もそうなのだが、フュージョンとロックの間といった感じのギターだ。音使いはフュージョンなのだが、オーバードライブの掛かった音色と荒い感じのピッキングやグリスがロックを感じさせるのか。

 

あと、この曲は歌詞がハードボイルド。父親殺しで逃亡中の男がダイナマイトを抱えて建物に立てこもっているうちに、徐々に狂っていく様子がモノローグで語られる。フェイゲン苦味ばしった声がこれまた合う。

 

I'm a bookkeeper's son/I don't wanna shoot no one/Well, I crossed my old man back in Oregon/Don't take me alive

俺はただの帳簿係の息子だ/誰かを撃ち殺してやろうなんて思ったことはない/なのに、戻ったオレゴンで親父を殺してしまった/もう俺は生きていられない(俺を生かしておくな)

 

Got a case of dynamite/I could hold out here all night/Yes, I crossed my old man back in Oregon/Don't take me alive

ダイナマイトを抱えて/ここで夜通し持ち堪えてやったぜ/そうさ、俺はオレゴンで親父を殺した/そんな俺を生かしておいて良いのかい(俺を生かしておくな)

 

その他全ての曲で、トップスタジオミュージシャン達のプロの仕事が堪能できる(ジャズ界から、ヴィクター・フェルドマンドン・グロルニックが参加している)

 

最高傑作と言われるものの一つ二つ前の作品には昇り詰める一歩手前ゆえの熱量、躍動感、実験精神が溢れていることが多く、個人的にはそんなアルバムが好きだ。

「Sgt. Pepper の一つ前:Revolver」「A Night At The Opera の二つ前:Queen II」などが良い例だが、

「Aja の一つ前:The Royal Scam(幻想の摩天楼)」もこれに当たる。

 

 

...で、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

好きなアルバムを良い音で(そして色々な音で)聴きたい、という想いから、US盤UK盤、そしてイスラエルと順次入手してきたのだが、音が明らかに違う。

 

The Royal Scam

US盤(1976年)

ABC Records 

ABCD-931

SideA:ABCD-931-A 1D AZ [flower] A26 S

SideB:ABCD-931-B 1B AZ [seagul] E14 I S


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以前にもUS盤を持っていたのだが、深いキズがあってブチブチ鳴るため、好きなアルバムだし買い替えるか、と入手したのがこれ。

 

針を下ろしてみると、あれ?音のキレが全然違う。エッジが立っていて、楽器の輪郭がくっきりしている。

 

プレス工場違うのか?アメリカは国が広いためカッティングやプレスが各地で行われている)とも思ったが、同じ系統のマト(Matrix)で、Discogsによると両方ともSanta Maria Pressingカリフォルニア州サンタマリアの工場でのプレス)

 

ただ、マトの枝番が違っている。以前から持っていた盤は1C/1A。後から入手した盤は1D/1B

音の違いは、カッティングの差なのか?(*1)、それとも個体差なのか?(*2)

 

*1:1C/1Aで納得がいかず、カッティングし直した?このため1D/1Bの方がエッジの効いた音になった?

*2:プレス枚数が多くなると、音の鮮明さや輪郭は少しずつ失われていくもの(音がヘタると呼んでいる)。持っていた1C/1Aは偶々ヘタった盤だった?

 

まあ理由はともかく、1D/1Bの方が良い音で鳴ることに変わりはない。

好きなアルバムがより良い音で聴けるようになって大満足、買い替え成功、と一人悦に入るのであった。

 

The Royal Scam

UK盤(1976年)

ABC Records 

ABCL 5161

Side1:ABCL 5161 A2 A 3

Side2:ABCL 5161 B1 C 3


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一般的に音質については、米国レーベルはUS盤が、英国レーベルはUK盤が良いとされる。

輸出のためにテープ(アナログ音源)をコピーする工程が無い分だけ音の鮮度が高いので、録音されたところでカッティング、プレスされた盤の音が一番良い、という訳だ(コピー劣化が無いとされるデジタル音源はこれに該当しない)

 

だが、中古レコードにおいては、UK信仰とも言うべき現象が存在する。何故かUK盤というだけで"売り"になるのだ。値段も高め。

 

例えば、「Queen / A Night At The Opera - US盤!希少」というのは無いが、「Grateful Dead / Wake Of The Flood - UK盤!希少」というのは有る。

 

Atlantic、Reprise、CBSWarner Bros.などの米国レーベルのUK盤を何枚か聴いたが、US盤がのびのびとしたした音なのに対して、UK盤は硬質な音。US盤が開放的なのに対して、UK盤は箱庭的、という言い方も出来る。

良く言うなら引き締まった音だが、悪く言うなら拡がりの無い硬い音といった印象だ。

 

… UK盤というだけで、全てが良いとは思えないのだが?

 

実際、Grateful Deadは圧倒的にUS盤の方が音の伸びや拡がりが良い。一方で、UK盤は音が硬くて彼らの良さが感じられない。(←あくまでも個人的感想です...)

 

と、揶揄するようなことを書いておきながら何なのだが、幻想の摩天楼のUK盤、どういう音がするのか、是非にも聴いてみたい、という想いに駆られ、Discogsで英国から取り寄せた。

 

で、どうだったかと言うと、これが当たりでした。

思っていた通り、硬質な音なのだが、これがSteely Danの音に合う。

 

US盤の方が鮮明な音、新鮮な音であるのは間違いないのだが、UK盤の硬く引き締まったような音の響きが、Steely Danハードボイルドな世界に何とも似合っているのだ。

音響的・音質的な観点ではUS盤の方が良い音だと思うが、UK盤のハードボイルドな響きも捨てがたい。

 

「僕が言いたいのは、米国レーベルのUK盤の音ですけど、良いものもある、悪いものもある」(増殖/YMO

 

The Royal Scam

イスラエル盤(1976年)

ABC Records 

ABCD 931

Side1:ABCD-931-A 1C AZ [flower] Q H SX I S

Side2:ABCD-931-B 1B AZ [seagul] SX G Q I S


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日頃から愛読しているブログ(shiotch7の明日なき暴走B-SELS)にBeatlesイスラエル盤はドラムベースの音がスゴイとの記事があり、そんなに凄いのか?と思い、Abbey Roadを入手したところ、確かにこれは凄い!

UKオリジナル盤と同じマザーなのに全体的に音量が大きく、中でもドラムとベースの押し出し感が凄い。プレスの仕方に原因があるのか?ビニール材質に差があるのか?いずれにせよ、凄い音がする。

 

…待てよ。ということは、Beatles以外もイスラエル盤は凄い音がするのか?

Steely Danもあるのか?幻想の摩天楼もあるのか?

 

USマザーなのか、UKマザーなのか、はたまた独自カットなのか、事前には一切分からなかったのだが、いずれにせよ聴かねばなるまい!とDiscogsでイスラエルから取り寄せたのがこの盤だ。

 

盤が届き、梱包を解くと、US盤ジャケットをカラーコピーしたような感じのジャケット海賊版/カウンターフィット盤かと思うレベル)、裏面には歌詞が印刷されており、当然のようにインナースリーヴは無い。(ジャケットはぼろくても、音さえ良ければOKなので、ノープロブレム)

 

そして、マトを確認してみると、USマザー1C/1B

 

で、肝心の音はと言うと、これが大当たり。

 

バーナード・パーディのドラム、チャック・レイニーのベースが凄い音で鳴る。US盤やUK盤と比べて3割増しの音量で響く。音量だけで無く、力強さが倍増している。パーディの腕、レイニーの指が筋力アップしたかのようだ。

 

その他の楽器の鳴りも素晴らしく、鮮明でキレのある音。また倍音も良く出ていると感じる。正直に言って、同じマザーのUS盤より一段も二段も上の音だ。

 

凄いな、イスラエル盤。しかし同じUSマザーなのに何故こうも違うのだろう?と考えるに…

 

ドラムやベースなどの低音については、ビニール材質の差なのではないか。レコード溝を針がトレースして音が出る訳だが、イスラエル盤は偶然にも低音の響きを増すような材質だったのではないだろうか。

 

そして、音の鮮明さ、キレの良さについては、プレス枚数が原因だと思う。初期にプレスされた盤はそれは素晴らしい良い音がするのだろうが、US盤はプレス枚数が多いので、そんな盤に巡り合うことは殆どない。一方でイスラエル盤はプレス枚数も少ないだろうから、US盤の初期プレス並みの音が味わえる。…違うかな?

 

と、各盤の違いを味わったり、あれこれ推測したりするのは楽しいですな。

 

 

最後に、ジャケット右下、ベンチに横たわる男の靴をご覧ください。

左から、US盤、UK盤、イスラエル盤。

イスラエル盤は靴の裏が赤っぽく着色されています。何故?

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おまけ情報

Steely Danにのめり込む切っ掛けとなったのがこの本。

FUSION AOR DISC GUIDE(2001年)

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主観満載のディスクガイドで、全部で230ページのうち、Steely Dan関連だけで50ページ近く割かれている。

あのアルバムはああだとか、この曲はこうだとか、バックのミュージシャンは誰だとか、ここでのプレイが最高だとか、熱くマニアックに語られる。

その他、この本のおかげで知ったミュージシャンやアルバムも多く、今でも重宝しています。

おすすめ。